嫁入り道具とは|昔と現代の違い&人気の品を選ぶポイント
日本の結婚文化において、嫁入り道具の存在は切っても切れないものです。
しかし現代では嫁入り道具の有無を重要視する家庭も減り、人によっては「嫁入り道具って何?初めて聞いた」という人も。
家庭や個人によって嫁入り道具の重要性は異なるため、パートナーやお互いの家庭との話し合いが大切です。
今回は、嫁入り道具の意味や歴史、昔と現代における嫁入り道具の違いなどをご紹介します。
現代でも、嫁入り道具は入籍時の重要なマナーだと考えている人は多くいます。
結婚のお祝いとしてだけではない嫁入り道具の歴史的背景を知り、幸福な結婚生活につなげていきましょう。
2023年08月29日更新
Contents
嫁入り道具って何?いまもあるの?
ここでは、嫁入り道具の基礎的な知識を解説します。
人によっては「プロポーズや結婚は当事者同士の問題なのに、なぜ実家から道具を持ち出す必要があるの?」と思う人もいるかもしれませんね。
嫁入り道具の歴史は、日本における結婚の歴史でもあります。
現代に受け継がれる嫁入り道具の文化を学び、結婚や夫婦・家族について考えるきっかけにしていきましょう。
嫁入り道具とは
嫁入り道具について知るためには、結婚の形の変化について学ぶ必要があります。
今でこそ結婚は「個人同士で行うもの」という認識ですが、昔は「結婚は両家同士のものである」という認識が一般的でした。
また現代の結婚では「平等な立場の男女ふたりが籍を入れるもの」ですが、昔の結婚は「女性側が男性側の家に入るもの」と考えられていました。
嫁が旦那の家に入る、つまり「嫁入り」と表現されてきたのです。
結婚後に大切な娘が困らないように、花嫁側の両親が持たせた家財道具が嫁入り道具です。
もちろん、女性側ばかりに負担をかけさせるわけではありません。嫁入り道具の購入に使うためのお金は、男性側が結納金として用意していました。
現代における結婚の文化でも、結納をするカップルは「男性側の結納金→女性側の嫁入り道具購入」の流れを汲んでいる傾向にあります。
現代でも嫁入り道具は必要?
現代の結婚文化では、嫁入り道具を必ずしも用意する必要はありません。
昔の結婚(嫁入り)は異なり、結婚後でも女性が実家と交流をとることが当たり前に許されているからです。
また結納の文化が昔と比べて衰退していることも、嫁入り道具が必須ではない要因です。
そもそも結納金自体に「女性が嫁入りの準備を整えるためのお金」の意味があるため、結納の習慣が減ったことで嫁入り道具の重要性も下がりました。
現代で嫁入り道具を準備する場合は、結納金ありきとは限りません。
女性側の実家が、娘の幸せを願い、費用を負担して用意する場合もあります。
今でも伝統的な家系では、昔ながらの嫁入り道具の風習が伝わっていることも。
文化は流動的に変化するため、嫁入り道具がないからといって「愛されていない」というわけではありません。
現代における嫁入り道具は、昔と比べてコンパクトサイズのものが多い傾向にあります。
おもな理由は、嫁入り道具が当たり前だった時代と比べてオーソドックスな家の間取りが変化していたり、「大きな家財はふたりで選びたい」と思うカップルが増えたりしたからです。
伝統的な嫁入り道具
ここでは、古くから受け継がれてきた伝統的な嫁入り道具をご紹介します。
地域や家によって細かな違いはありますが、昔ながらの嫁入り道具は以下の3つです。
・婚礼家具
・婚礼布団
・着物
それぞれの特徴を学び、今につながる結婚の文化について理解を深めていきましょう。
婚礼家具
婚礼家具とは、結婚をするときに購入される家具です。
嫁入り道具として最も一般的な品であり、おもな婚礼家具は以下の3つが挙げられます。
桐箪笥(きりたんす)
鏡台
洋服用のタンス
なかでも桐箪笥はオーソドックスな婚礼家具です。
昔の女性は嫁入り道具に「中に大量の着物が入った桐箪笥」を持たされるケースが多い傾向にありました。
洋服用のタンスは、現代におけるクローゼットの役割を持っています。
洋服用タンスを贈る際にも着物が詰められており、「将来家族ができて荷物が増えても家を綺麗に保てるように」という願いが込められていたそうです。
鏡台も桐箪笥と同様に伝統的な嫁入り道具の一つです。
鏡台とは昔ながらのドレッサーのタイプで、鏡と引き出しがセットになっている家具を指します。
正面と左右の三面鏡になっており、着物を着るときに便利であることから嫁入り道具として愛されてきました。
婚礼布団
婚礼布団は、高級な素材を用いた高品質の布団を指します。
当時はベッドの文化はまだないため、寝具といえば布団のことを意味していました。
婚礼布団は当人や家族で使われるケースもありましたが、おもな使用用途は「お客さん用」です。
昔はお客さんが訪問した際、布団の品質や豪華さで「その家で嫁がしっかり働いているかどうか」が評価されたのだとか。
お客さん用に豪華で清潔な婚礼布団を用意することで、嫁だけではなく旦那、家系、一族の豊かさや教養をアピールできたのです。
お客さんに薄汚れた中古品の布団を出してしまうと、嫁や嫁入り先の家まで評価が下がってしまいます。
美しい婚礼布団は、その家の嫁の社会的な評価を上げるためにも役立っていたということです。
またお客さんをおもてなしするための道具として、布団だけではなく複数の座布団もセットで一式とされていたそうです。
着物
桐箪笥に詰めるための着物も、重要な嫁入り道具です。
結婚する女性たちは美しい着物を一式であつらえており、なかでも以下の3種類の着物は必ず用意されていたといわれています。
黒留袖(くろとめそで)
喪服
訪問着
黒留袖とは、既婚女性が着用する着物のなかでは最も格式が高い正礼装です。
現代でも、親族の結婚式や披露宴、結納式などの重要なシーンで着用されます。喪服は言わずもがな、葬儀の喪主や遺族・親族・参列者・弔問客などが着用する礼服です。
普段から着物を着る習慣がないと、訪問着をイメージしにくい人も多いでしょう。
訪問着とは、フォーマルシーンからカジュアルシーンまで幅広く着用できる着物です。
年齢や結婚の有無にかかわらず着用できるため、普段から着物を着ることが当たり前だった時代の女性たちに愛されてきました。
もちろん、着物の量や質も女性の家柄を問われるために重要なポイントです。
「美しい着物をたくさんあつらえてあげてほしい」との想いで、多くの結納金を渡すケースも少なくありませんでした。
現代の嫁入り道具
ここでは、現代の嫁入り道具について紹介していきます。
現代の嫁入り道具は、夫婦ごとのライフスタイルに合わせたものが主流です。
嫁入り道具の予定がある場合は、結婚準備期間から親族と相談しながら決めていきましょう。
家電
現代の嫁入り道具として選ばれることが多いのは、家電製品です。
なかでも定番として、洗濯機や冷蔵庫などの大型の家電が挙げられます。
とくに結婚を機に夫婦で引っ越す場合は、新しい家電を贈ってもらえることで生活に余裕が生まれることも。
マイホームの購入を検討している場合は、時期を待ったうえでエアコンという選択肢も考えられます。
昔の嫁入り道具ではさまざまなアイテムが選ばれましたが、最近の嫁入り道具では「大きな贈り物を一つ」のスタイルをとっているケースが多いようです。
両家としても、可愛い息子・娘たちには整った生活環境で暮らしてほしいと考えるもの。
便利な最新家電は引っ越し時の経済的負担を減らすだけではなく、生活の利便性や精神的な余裕に直結します。
家具
家電製品に次いで人気の嫁入り道具が、家具です。
とはいえ昨今の夫婦は「家具はふたりで選びたい」と考えているケースが多く、嫁入り道具とする場合は具体的なリクエストをするのが一般的です。
家具で定番の嫁入り道具としては、ダイニングテーブルセット・ソファー・食器棚・寝具などが挙げられます。
寝具の場合も昔ながらの婚礼布団ではなく、手入れが簡単なものを選ぶ傾向にあります。
パールジュエリー
人生のさまざまなシーンで役立つパールジュエリーも、人気の嫁入り道具の一つです。
プライベートで多用するケースは少ないものの、冠婚葬祭・入学式・卒業式などのマナーが求められる場面で役立ってくれます。
大人になると、フォーマルな場面に参加・参列しなければならないタイミングがあります。
パールジュエリーは、女性が社会的な役割を果たすためのサポートをしてくれるアイテムだといえるでしょう。
またパールは愛情の象徴ともいわれており、「パートナーといつまでも仲睦まじい家族でいられるように」という願いも込められています。
冠婚葬祭用アイテム
パールジュエリーとあわせて嫁入り道具に選ばれるのが、冠婚葬祭用のアイテムです。
喪服の他に、バッグ・袱紗(ふくさ)・数珠などがセットになっています。
また喪服を夏でも冬でも使えるように、調節しやすい上着もセットに含まれている場合もあります。
新生活を想像して嫁入り道具を選ぼう
嫁入り道具の選定では、夫婦の新生活を想像しつつ選ぶことが大切です。
ここでは、嫁入り道具を選ぶ際のポイントをご紹介します。
価格ブランドだけではなく「本当に必要なものかどうか」を見極め、夫婦や実家との絆を深めるような商品を選びましょう。
ライフスタイルに合わせた準備を
嫁入り道具を選ぶ際は、夫婦の新生活に見合っているかを考えます。
たとえば新居があまり広くない場合は、大きな箪笥や食器棚などはスペースを取りすぎてしまいますよね。
また、すでに気に入っている家電があるのに新製品を貰ってしまうと、昔の品も捨てにくく困惑してしまいます。
贈った側も贈られた側も幸福になれる嫁入り道具のためには、実用性に優れているかどうかを前提に、新しい生活のカタチを実家に伝えましょう。
欲しいものを具体的にリクエストするのも一つの手段です。
また嫁入り道具では、将来的に家族が増える可能性も視野に入れましょう。
たとえばクローゼットやタンスはあえて3~4人分にしたり、大容量型の洗濯機を選んだりするのがおすすめです。
嫁入り道具は、過去から現代につながる文化
今回は、嫁入り道具の意味や歴史、昔と現代における嫁入り道具の違いをご紹介しました。
現代における結婚では、結納がない限り「嫁入り道具は絶対に必要」というわけではありません。
しかし嫁入り道具は両親が娘を想う気持ちの表れであるとともに、新生活でも実家の愛情に触れられるアイテムです。
結納式がなくても両親が「嫁入り道具を贈りたい」と思ってくれている場合は、その気持ちに応えるために、ぜひ無理のない範囲でリクエストしましょう。
家族の愛情を素直に受け取ることも、ひとつの親孝行の形です。
低予算の嫁入り道具では、新姓の印鑑や食器類なども人気です。
夫婦のライフスタイルと相談しながら、家族との絆が残せる嫁入り道具を考えてみましょう。